更年期障害
更年期とは、女性の生涯のうち、成熟期から老年期に移る一時期のことで、卵巣機能が低下しはじめ、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減ってきます。更年期がいつ訪れるかは個人によって違いますが、ふつうは50歳前後で閉経を迎えることから、45歳ぐらいから55歳ぐらいまでの約10年間が更年期にあたることが多いようです。 そして、更年期になるとホルモンバランスが乱れ、それによってさまざまな不定愁訴(不調)が現れやすくなります。これがいわゆる更年期障害です。
漢方で更年期障害に対処する!
中国でまとめられた漢方の古典『黄帝内経素問(こうていだいけいそもん)』では、女性は7年ごとに節目があり、体や心に変化が起こると捉えています。 これによると、42歳あたりから白髪が生え始めるなど、加齢の兆しが見え始め、49歳ぐらいで閉経にいたるというわけです。ここから、女性の年齢による体の変化は今も昔もそう変わらないことが分かります。
◆女性の生殖年齢の変化 7歳:腎気盛、歯更り、髪長し 14歳:天癸至り、月事下る、故に子あり 21歳:眞牙生じ長極まる 28歳:髪の長極まり、身体盛壮 35歳:面始めて焦れ、髪始めて白し 49歳:天癸渇き、形壊えて子無き 【『黄帝内経素問』上古天真論】 ※「女性の漢方」石野尚吾著より 昔は更年期や更年期障害という概念こそありませんでしたが、その時期に起こったさまざまな不定愁訴に対しては、漢方薬が使われていました。 今でも、検査では異常がないけれど、本人はつらい症状を持っている。いわゆる不定愁訴の治療は漢方治療がもっとも得意とするところです。ですから、現在でも更年期障害は漢方治療のよい適用となり、使われる頻度も高い疾患の一つといえます。
漢方では、漢方の独特の考え「気・血・水(き・けつ・すい)」から不調を探っていきます。更年期に現れるさまざまな不定愁訴は、気・血・水のうちの、気や血の不調から来ていると捉えられています。分かりやすく言うと、頭痛や肩こりは血の流れが滞る「お血」、めまい、気力や集中力の低下、睡眠障害、耳鳴りなどは血が不足する「血虚」、のぼせやほてり、頭痛、動悸などは気の流れに異常が生じる「気逆」と捉え、これらを改善する漢方薬が処方されるのです。
■ 更年期障害に対する漢方療法の利点
・更年期障害の治療は比較的長期にわたって行われることが多いが、漢方療法の副作用の発生頻度は少ない ・ホルモン補充療法は、運動血管障害には奏功するが多彩な愁訴には不十分で、漢方療法よりも副作用が多い ・精神安定剤には眠くなる作用があり、抗うつ剤はその使い方が婦人科医にとって不慣れである |